東山彰良さんは16日、台北市内で中国語版の『流』発売イベントに登場、創作過程などについて語った。(中央社)
台湾出身の作家、東山彰良さんは昨年、小説『流』で日本の直木賞を受賞した。同作品は1970年代の台湾を背景としており、国共内戦、戒厳令実施などの重苦しい歴史にも触れられているが、東山さんは若者が成長する興味深い物語で読者を引き付けた。 東山さんの本名は王震緒。ペンネームの「東山」は、祖先の故郷である中国大陸の山東省から取り、「彰」は母親がかつて教鞭をとった、台湾中部の彰化県からのもの。5歳で両親と共に日本に移り住んだ。東山さんは昨年、『流』で直木賞を獲得。1955年の故邱永漢氏、1968年の故陳舜臣氏に続く、台湾出身者として三人目の直木賞作家となった。 『流』の年代設定は1975年。東山さんは当時7歳で、台湾に一時戻って2年間暮らした。まさにその年、蒋介石総統(当時)が逝去しており、東山さんは、この台湾にとっての歴史上の転換点を小説に描き入れると決めた。そして、自らの少年時代の視点に父親の人生経験を加えて、主人公「葉秋生」の原型を生み出したという。 東山さんは、「この小説は日本の読者のために書いた。自分の知っている台湾、すなわち自分が最も幸せだった時代の台北と、当時、廣州街(台北市)で暮らしていた大人たちの思い出を日本の読者に伝えたかったからだ」と語った。『流』の中国語版が台湾で発売されたことについて東山さんは、「台湾の読者は自分より台湾を知っている。台湾の読者がどう評価するか、大変不安だが楽しみでもある」と話している。